高齢者の衰えの予防と回復

年を重ねるごとに筋肉が減り歩く速さが遅くなり、次第に身体の活動水準も低下します。

高齢者の衰弱はそのまま介護に向かう状態と考えられてきたが、運動や食事など積極的な対策によって予防や回復が可能と受け止められるようになってきました。

 

日本老年医学会が2014年に「フレイル」という考え方を提唱し、従来の衰弱に対する見方が変化し始めています。

「いったん始まったらもう戻れない。」といった悪い印象を拭い去れたと思います。

 

フレイルは、英語で虚弱を意味する「Frailty」をもとにした造語で、高血圧や糖尿病など生活習慣病の危険が高まるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を「メタボ」筋力の低下によって引き起こされるロコモティブシンドローム(運動器症候群)を「ロコモ」と省略して呼び、社会に浸透しやすくなった事例を参考に言葉を決めた経緯があります。

 

動作が遅くなったり転倒しやすくなったりするなど身体的な問題だけではなく、フレイルには認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題、独り住まいや経済的な困窮などの社会的な問題も含む。放置すれば介護が必要な状態に陥るし場合によっては生命にかかわります。

正式な診断方法はまだなく、学会で検討中だそうですが、介護予防事業で用いられている基本チェックリストには似た考え方の項目があり参考になりそうだという。

フレイルの「分かりやすい判断基準が2つあり、歩行速度握力です。

歩行速度の基準
高齢者の歩行速度の研究から、1秒間に0.8メートル以下になると介護が必要になるリスクが高くなることが分かってきています。

筋肉の量ではなく筋力が重要で、足を蹴り出す力やももを持ち上げる力の衰えが歩幅を小さくして歩行速度を遅くするのです。

横断歩道の青信号は毎秒1メートルの速度で渡れるように設計されており、横断歩道を渡れなくなると要注意です。

 

握力の基準

握力も50歳を超えたころから徐々に低下し、過度に低下すれば自分を支えるために手すりにつかまりにくくなるし、荷物の持ち運びができなくなります。

男性では26キログラム、女性では18キログラム未満になると支障が出る目安になっています。

 

高齢者で介護が必要になる要因を年齢別にみると、70代までは「脳卒中」が圧倒的に多く、80歳以上になると「衰弱(フレイル)」が増え、90歳以上では3割を超すと言われています。

 

フレイルを防ぎ健康を回復するにはどうすればよいのだろうか。基本はやはり運動と食事です。

運動ではウオーキングが一番取り入れやすく、最低でも1日5000~6000歩を継続すると筋力の低下を防げます。

食事面では、筋肉のもととなるたんぱく質の摂取が大切、性別を問わず体重1キログラム当たり1グラムのたんぱく質を毎日食事から取ることが望ましく、体重50キログラムの人の場合は50グラムです。

 

肉や魚、大豆、牛乳などがたんぱく質を多く含む。平均すると日本人は必要なたんぱく質を取っているが、好き嫌いの差があり人によってまちまちで、注意が必要です。

 

同時にビタミンDも必要なので、体内のビタミンDは太陽光を受けて活性化し、たんぱく質の合成を促すことから、1日に最低5分でいいから日光に当たることをお勧めします。

日本人の平均寿命は長いが、自立して生活できる健康寿命との差は男性で約9年、女性で約13年もあることから、フレイルの回避で健康寿命を延ばし、この自立が困難な期間を半分にしようとする運動が始まっています。

運動や食事でのたんぱく質の摂取が困難か方には、サプリメントなどで上手に補う方法もありますご参考にしてください。

 

 高齢者の健康維持のための歩行
お年寄りの歩き方の特徴はまず猫背になり歩幅が狭くすり足で歩くことです。

見た目も年より年より臭くなり、ご自身の健康上の問題も多々発生します。

是非、大股で背筋を伸ばして、テンポよく歩く習慣を身に付けてほしいと思います。

 

大股でふだんより速く足を動かす「速歩」は買い物や散歩などの際に手軽にできる健康法です。

「マラソンやジョギングは体力的に自信がない」「運動する時間がない」という人も無理せず自分のペースでできます。

シニアには足腰の筋肉を維持・強化するだけではなく、最近では認知症の予防にも効果がみられることが研究調査で明らかになってきています。

 

「速歩で重要なのは歩調(テンポ)をあげることでなく歩幅を広くすることです」。

目標の歩幅は65センチ、中高年になると筋肉の衰えに加えて脳機能が歩幅の広さに影響するといわれています。

ポイントとなるのは姿勢です。

(1)肘は自然に曲げて、腕を後ろに大きく、前は小さく振る

(2)膝を伸ばしてかかとから着地する

(3)おしりの筋肉を持ち上げて背筋を伸ばす

 

歩幅と姿勢がきちんとそろえば速度は自然に速くなり、普通のウオーキング

に比べて足腰の筋肉が鍛えられます。

さらに視線はなるべく前に保ち、へその下に力を入れ、手をあてて筋肉が硬くなっていればきれいな歩き方になっているといわれます。

 

フレイルの予防として、大股でテンポよく、姿勢を正しくして歩くことをお勧めしてきましたが、既に腰や肘、膝に痛みを感じている方は無理はせずに、先ずは痛みの解消に努めてください。

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